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世界最大級の超伝導膜
IT】発信:2003/06/09(月) 09:07:07  

   産業技術総合研究所・物質プロセス研究部門無機固体化学グループの熊谷俊弥・研究グループ長、真部高明・主任研究員らは、世界最大級(30×10センチメートル)のエピタキシャル(エピ)成長した酸化物高温超電導体(YBa2Cu3O7)膜を作製することに成功した。今後、大面積超電導膜について超電導発電関連機器・材料技術研究組合(Super―GM)との共同研究にて通電試験が行われる予定であり、電力系統の安定化に寄与するSN転移抵抗型限流器開発の促進が大いに期待される。

   大面積超電導膜は、通信分野においてマイクロ波領域での低損失性を利用したフィルタ、アンテナ等のエレクトロニクスデバイスや、電力分野において超電導から常電導への瞬間的転移を利用した限流器等の機器への応用が期待されている。従来、超電導膜作製に関してレーザー蒸着法等の気相プロセスを主流として世界的に激しい開発競争が行われてきたが、気相プロセスは高コストでかつ量産化が困難という問題点があった。これに対し、産総研では経済産業省・交流超電導電力機器基盤技術研究開発制度で、塗布熱分解法を用いた大面積超電導膜作製の研究開発を行ってきた。この方法は原料溶液を「塗って・焼いて」セラミックス膜を作るものであり、気相プロセスと比べてはるかに低コストでかつ量産化が可能である。この方法による超電導膜作製については産総研が基本特許を有している。

   今回、世界最大級の超電導膜作製が可能となったのは、塗布熱分解法に適した平滑なセリア(CeO2)中間層が真空蒸着法により大面積にわたって均一に作れるようになったことと、その上への塗布熱分解法による超電導膜作製の最適化に成功したためである。

   まず、30×10センチメートルサイズのサファイア単結晶基板上に真空蒸着法でCeO2中間層を40ナノメートル形成し、その上に塗布熱分解法によって高温超電導体(YBa2Cu3O7)を250ナノメートル積層。CeO2の真空蒸着においては温度分布の均一性をよくするためにシールドを工夫し、RF(ラジオ波)アンテナにより酸素をプラズマ化した。塗布熱分解法における出発原料は超電導体構成金属の有機化合物(アセチルアセトナト)を用いた。仮焼成条件は空気中500度C、焼成条件は酸素分圧を精密に制御した雰囲気下(酸素分圧:10のマイナス4乗気圧→1気圧)で750〜780度C。作製された超電導膜が粒配向の揃ったエピ成長膜であることをX線回折で確認した。

   また、液体窒素温度(マイナス196度C)での臨界電流密度が最高190万A/平方センチメートル、平均100万アンペア/平方センチメートルいう非常に高い特性を有することが誘導電流法によって示された。この膜サイズは世界最大級であり、その超電導特性は経済産業省・交流基盤研究の基本計画目標をクリアして、SN転移抵抗型限流器設計上の要求仕様を満たすものとなっている。

   今後、この成果の大面積超電導膜について、Super―GMとの共同研究による通電試験を行い、将来的には限流動作の実証を行う予定であり、SN転移抵抗型限流器の開発が大いに期待される。

   ※SN転移抵抗型限流器…過大な電流が流れたときに超電導膜が瞬間的に 超電導状態から常電導状態に転移することを利用して、電力系統(基幹系・配電系)における落雷等による事故短絡電流を瞬時に抑制して、遮断を容易にする電力機器。



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