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湿度の変化で磁極方向反転する物質、東大のグループが合成に成功
【その他】発信:2004/12/15(水) 11:02:00
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東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻の橋本和仁教授らは、湿度の変化で磁極の方向が反転する物質の合成に世界で初めて成功した。これまで不可能とされてきた磁気による湿度センサーの実現に期待が集まっている。11月21日付のネイチャー・マテリアルズ・オンライン版に掲載された。なおこの研究は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業で行われたもの。
湿度の測定原理は現在、乾湿式のほか、抵抗式、静電容量式など様々なものがあるが、精密な測定は一般に難しい。水分子と磁性材料との相互作用を明らかにし、湿度の変化を磁気的に読み出すことができるようになれば、新たな測定原理を提案することになり、測定精度が向上する可能性がある。
湿度に敏感に応答する磁性材料を得るためには、水分子がその量に応じた作用を磁性体に及ぼす必要がある。そこで研究グループは、水分子を吸蔵できる磁性材料で、かつ強磁性を示すシアノ架橋型金属錯体に着目し、湿度の変化と磁化の関係について研究を進めた。
シアノ架橋型金属錯体の一種Aについて、湿度を変化させながら、各湿度における磁化―温度曲線を測定した結果、磁気相転移温度が27K(湿度80%)から22K(湿度3%)へ変化することが明らかになった。また、飽和磁化が湿度の変化に応じて可逆的に変化することも発見した。
各種分光測定の結果から、この湿度に依存した磁化の強度の変化は、(1)コバルトの電子の軌道の対称性が水分子の影響で変化、(2)コバルトの電子状態の変化に伴い、金属錯体中のコバルトとクロムの磁気的相互作用(強磁性的相互作用と反強磁性的相互作用)が変化、というプロセスで発生していることが判明した。湿度に応答して磁気特性が可逆的に変化する磁性体の発見は世界初。
また、コバルトとマンガンが原子レベルで混合されたシアノ架橋型金属錯体の一種Bを新たに合成し、いくつかの湿度で温度を変化させながら、磁化―温度曲線の測定を行った。この結果、この金属錯体は44K以下の低温では湿度80%で負の磁化方向を示すが、湿度5%以下では、いくら温度を下げても磁化の符号は正の方向を示すことがわかった。
これは、湿度の低下によって、(1)金属錯体内部でコバルトの電子の軌道の対称性が変化、(2)マンガンとコバルトの磁気相互作用及びクロムとコバルトの磁気相互作用のバランスが変化、というプロセスで、材料全体に表れる磁化が反転することを意味している。また、この現象は、理論計算によっても裏付けることができた。
この研究では、従来不可能とされてきた磁性材料の湿度応答の観測に成功しただけでなく、そのメカニズムを解明しており、今後の材料設計の明解な指針をつかむことができた。また、金属錯体をベースとした強磁性体が、従来型磁石とは全く異なり、多様な応答性能を付与しうることを示した。
また、湿度を磁性の変化として精密に測定するためのセンサーの開発につながることが期待される。今回の成果は、低温で得られたものであるが、同系統の磁性材料で、磁気相転移温度がより高い材料の合成に成功すれば、室温での動作も可能になると期待される。
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