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環境汚染物質、新たな作用機序発見
【バイオ】発信:2007/04/17(火) 08:51:17
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東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明教授、大竹史明JST研究員らは、タンパク質複合体を分析する手法を用い、環境汚染物質の毒性作用に関わるダイオキシン受容体(AhR)が他のタンパク質と結合することによって、性ホルモン受容体タンパク質の分解を促進する酵素として働くことを明らかにした。環境汚染化学物質の新たな作用機序として、タンパク質分解を介したホルモン作用遮断機構を初めて提起した。ネイチャーに3月29日掲載された。
AhRは、ダイオキシン類やディーゼル排気ガス、タバコ粉塵に含まれる発ガン成分ベンツピレンなど、環境中の様々な化学物質と結合することが知られている。これら環境汚染化学物質の一群は多環芳香族炭化水素(PAH)と呼ばれ、PAHがリガンドとして結合したAhRは活性化し、細胞核内で特定の遺伝子発現を活性化することが知られている。しかし、それだけではPAHの多様な毒性作用を説明できない。
研究グループはこれまで、リガンドとして結合することで活性化したAhRが細胞核内で女性ホルモン受容体(ER)と直接結合して、女性ホルモンの正常な情報を攪乱することを明らかにしている。しかし、AhRが活性化状態のERの機能を抑制する仕組みは分かっていなかった。
今回、AhRのリガンドが存在する環境下で、培養細胞においてERおよびAR(男性ホルモン受容体)タンパク質が減少することに着目し、AhRのタンパク質複合体がこれらのタンパク質分解を促進しているかどうかを調べた。
まず、培養細胞の核内でAhRが会合しているタンパク質群の複合体を、生化学的方法で単一の複合体として精製し、質量分析計で構成因子を同定。ついで、得られた複合体が試験管内でユビキチン化の酵素活性を示すかどうかを調べた。ユビキチン化されるとタンパク質は分解されるため、複合体がERとARタンパク質に対してユビキチン化酵素活性を示せば、これらのタンパク質分解を促進していることになる。
実験の結果、AhRは単独ではユビキチン化酵素活性を示さないが、リガンドと結合してユビキチン化修飾酵素複合体を形成することで、複合体の他の構成因子と協働して、ERやARをユビキチン化する活性を示した。さらに、AhRのユビキチン化修飾酵素複合体により、ER、ARタンパク質が分解され、女性ホルモン・男性ホルモンの作用が遮断されることを、AhRのリガンドを投与したマウスの子宮や前立腺を用いた実験で確認した。
これにより、タンパク質複合体の構成因子を変えることで、AhRがタンパク質分解を制御するユビキチン化修飾酵素としても機能していることが明らかになった。
今回の研究は、環境汚染物質の新たな作用点として、タンパク質分解を介したホルモン作用の遮断機構を初めて提起した。危険化合物のスクリーニングの指標として、従来の遺伝子発現に加え、タンパク質分解活性を調査することの必要性を示したものである。
また今回の成果は、低分子化合物がタンパク質分解を直接制御する事例としても、動物界では初めての報告になる。これまで、同様の低分子化合物が結合する一部の受容体群は、遺伝子発現を活性化する作用を有することで、創薬のターゲットとなってきた。今回、低分子化合物が受容体を介してタンパク質分解を制御する仕組みが発見されたことで、女性ホルモン依存性の乳ガン、子宮内膜ガン、男性ホルモン依存性の前立腺ガンなど、ホルモン依存性ガンなどに対する創薬に、新たな突破口になる可能性がある。
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