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将棋での脳内活動を探索、直感思考が小脳にを証明
バイオ】発信:2007/09/04(火) 19:10:35  

  小脳が人間の直感やひらめきを司っているとする思考の小脳モデルを実証するため、理化学研究所、富士通、富士通研究所は、日本将棋連盟の協力を得て、将棋における脳内活動の探索研究を開始した。将棋における局面の状況判断や差し手の決定過程等にかかわる脳の神経回路の情報処理メカニズムを解明し、人間に特有の直感思考の仕組みを解明する。理研脳科学総合研究センターの伊藤正男特別顧問は「非常に高度に訓練されたプロ棋士の集団である日本将棋連盟が協力してくれることで、直感思考が小脳にあることが証明できる」と話す。

  伊藤正男理研脳科学総合研究センター特別顧問は「運動だけでなく思考過程においても小脳が重要な役割を果たす」とする小脳仮説を展開している。小脳仮説では、一つの課題に対して、集中して何度も何度も繰り返し考えると、大脳に思考のモデルが形成され、それが小脳にコピーされる。同じような問題が与えられると、その情報をもとに小脳は考え続けるが、大脳と違い、本人には意識されないため、最終的な解答が得られると、それを直感だと認識する。

  数千万本の神経繊維が、小脳と大脳をつないで、情報のやりとりをしていることが、その有力な証拠の一つとされているが、小脳仮説を証明するためには、思考をしているときの小脳活動を詳細に測定する必要がある。

  しかし、実際にそうした実験をするのは難しい。あるテーマについて深い知識を持っている集団を集める必要があることや、4テスラという強力な磁場を持つfMRIで測定するため、被験者は動くことはできず、電子機器は強力な磁場で壊されてしまうこと。また、被験者に思考をさせ、持続させていかなければならないこと。さらには、測定データにあわせて被験者が何を考えていたかを説明し、それを第3者が検証できなければならないことが課題となっていた。

  理研では、野依良治理事長の「理研は文化に貢献する」という発想の下、文化に造形の深い有識者が所内で講演する「文化の日」を設けており、その2回目で日本将棋連盟の米長邦雄会長(永世棋聖)が「人間の脳と将棋」と題する講演を行った。これをきっかけに、日本将棋連盟の中に「Shogi・Super―Brain研究会」が発足し、今回の共同研究が始まるきっかけになった。

  プロ棋士は、幼い頃から将棋について毎日考えており、頭の中で将棋盤をイメージして現実の駒を扱わずに対局できる。また、対局、詰め将棋など、一つの場面のことを考え続けることができることや、手を読むという活動を測定後に被験者が説明し、他の棋士がその内容を検証できるなど、小脳仮説を証明するための被験者としては最適の集団だ。

  共同研究では、3つのアプローチから将棋における小脳活動を測定し、小脳仮説を証明していく。

  認知機能表現研究チームでは、将棋を指すことに伴う思考過程をfMRIで検証する。プロの棋士の脳には脳ダコ(小脳にコピーされた思考)ができており、駒の配置の記憶には特定の神経回路が最適化され、プロ棋士には高度思考により新しい神経回路が生まれるという3つの仮説を証明する。プロ棋士とアマ棋士の脳の構造、思考の記憶、過程を探る。

  創発知能ダイナミクス研究チームは、将棋思考過程における脳活動の脳波による解析を行う。直感的に最前手を判断する神経回路が現れるという仮説のもと、知識、予測、状況、無意識の計算を担う、どの部位の脳波リズムがいつ同期するかを調べる。詰め将棋、次の一手問題、対局に関する考察を行うときの脳波を調べる。

  記憶学習機構研究チームは、無意識のうちに働く小脳の回路を調べる。盤面を見たときに大脳は小脳と連携して無意識下に最善手を予測するというかせつの下、プロ棋士を対象に誤差学習の実験を行う。伊藤特別顧問は「見た瞬間に最善手が見えてくるのがプロ棋士。その脳活動を調べることで小脳モデルが証明できる」と話す。

  実際、米長棋聖に話を聞くと「手を選ぶときの95%はひらめき。盤面を見た瞬間に最善手が浮かぶ。2つ以上の手が浮かんだ時に長考に入る」という。また「この研究が進むことで、将来の対局では盤面だけでなく、棋士の脳活動も一緒に見られるようになるかもしれない。ぜひ、これだ!という手が浮かんだ時の自分の脳活動を見てみたい」と話す。

  富士通は今回、スポンサーとして参加するが、今回の成果をもとに、より高度な人工知能を構築したいという。秋草直之富士通会長は「新しい日本発のイノベーションができるに違いないと思っている」という。



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