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細胞表面のイオンの通り道動き、1分子単位で観察に成功
【バイオ】発信:2008/02/04(月) 07:25:54
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福井大学医学部分子生理学領域の老木成稔教授、清水啓史助教、高輝度光科学研究センターの佐々木裕次主幹研究員らは、細胞表面に存在するイオンの通り道であるイオンチャネル分子の動きを1分子単位で観察することに成功した。米国科学雑誌『Cell(1月11日号)』に掲載された。
バクテリアからヒトまであらゆる細胞の細胞膜には、10nmほどのイオンチャネルが存在する。構造の中央にあるイオン透過路(孔)を刺激に応じて開閉し、細胞内外にある特定のイオンの流れを制御することで、細胞周辺の情報を細胞内や隣接細胞に伝える。チャネル分子の異常は、不整脈や糖尿病、神経疾患などの原因にもつながる。
研究チームが観察対象にしたカリウムチャネルは、カリウムイオンだけを高速に流し、その流れを制御する。これまでカリウムイオンの通り道である孔がどのような構造を持ち、どのような機構で開閉が行われているかは知られていなかった。近年、1分子のチャネルだけを隔離し、電気的特性を計測できるようになったことや、数種類のカリウムチャネルの立体結晶構造が明らかになったことから、カリウムイオンチャネルへの理解が深まりつつあるが、1分子単位のチャネル分子の動きを高精度かつリアルタイムで観察することには成功していなかった。
今回の実験では、佐々木主幹研究員らが開発したX線1分子追跡法を用い、カリウムチャネル分子が構造を変えながら、働いている現場を捉えることに成功した。チャネル分子が開閉する動きを直接観察するために、イオンチャネル分子全体と、膜に埋めこまれた部分のみの分子を観察。取り出した分子は、細胞外側の部分をガラス基板に固定し、細胞の内側に約20×5nmの金ナノ結晶を結合させている。この結晶に広範囲の運動をモニターできる高輝度白色X線を当て、そこから出る回折点を高精度に検出し、チャネル分子の動きを観察した。実験には、pHによって開閉(動き)が制御されるカリウムチャネル『KcsAチャネル』を用いた。
チャネル分子が閉じた状態では動きはわずかだったが、開閉を繰り返す条件で観察したところ、チャネル分子は大きくねじれ運動をした。この運動は、孔が閉じた状態から開く時、またその逆の構造変化の過程を表している。実験には2種類の分子を使用したが、その両方でねじれ運動が見られたことから、この構造変化を起こす運動は、膜に埋め込まれた部分を起源にして細胞内領域も加えたチャネル全体に伝わることがわかった。
今後は、細胞内で実際にチャネル分子が機能している状態のリアルタイム観察や、マイクロ秒レベルの高速な分子の運動を測定できる検出器の開発などを目指していくという。老木教授は「イオンチャネルは言わば生体電気ナノマシン。この優れた構造物を深く理解するためには、動きの中に機能を読み取る必要がある。チャネル分子の異常を分子の動きを踏まえて明らかにできれば、チャネル異常が原因の疾患の新しい治療につながる可能性がある」と話す。(科学、1月18日号4面)
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