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ハンチントン病発症関与、転写因子NF―Yを発見
【バイオ】発信:2008/04/07(月) 08:49:26
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理研脳科学総合研究センターの貫名信行・チームリーダー、山中智行・研究員らは、日本国内では100万人に6人が罹患しているハンチントン病の発症に関わる新たな転写因子NF―Yを発見した。発症に関わる重要な転写因子であり、今後の研究によってハンチントン病の発症を遅らせる薬剤の開発につながるものと期待される。欧州・分子生物学会のThe EMBO Journalの3月21日号に掲載された。
ハンチントン病や遺伝性の脊髄小脳変性症の多くでは、原因遺伝子を構成するDNA配列の一部で、C・G・Aと並ぶ塩基配列の繰り返しが通常では20回程度なのに対して、40回以上も繰り返すことで、異常に伸びたグルタミン鎖を含む原因遺伝子産物が神経細胞に大量に蓄積し、神経細胞死や機能異常を引き起こしている。そのため、トリプレットリピート病ともいわれている。実際の病理解剖では、脳の線条体が萎縮し、線条体中枢神経細胞が脱落することで、脳内に空洞ができていることが分かっている。
単一遺伝子疾患であるハンチントン病は、一般に中高年で発症するが、世代を経てポリグルタミン鎖が長くなると若年でも発症する。近年、こうした病態を再現するモデルマウスの解析から、神経細胞の核にポリグルタミンを含むタンパク質凝集体(核内封入体)が形成され、発症の大きな要因になっていることが示唆されている。つまり、転写因子が核内のタンパク質凝集体に結合してしまい、機能しなくなることで遺伝子発現異常を引き起こしていると考えられるが、本当に重要な転写因子は分かっていなかった。
研究チームは、伸長するポリグルタミン鎖を発現すると異常な凝集体を形成する病態を、細胞レベルで再現するモデルを作成。この細胞を用いて凝集体を取り出し、結合しているタンパク質を質量分析で解析した結果、最も強く結合しているNF―Yを発見。NF―Yは、YA、YB、YCという3つのサブユニットからなる転写因子。モデルマウスの大脳を染色すると、YAとYCが核内封入体に局在していることがわかった。
NF―Yはタンパク質の折り畳みを制御するシャペロンの一つであるHSP70の遺伝子発現を調節するプロモーター領域に結合する。一方、モデルマウスではHSP70の発現が低下することが知られている。そこで、モデルマウス脳におけるNF―YのHSP70のプロモーターへの結合を調べたところ、結合が少なくなっており、さらにHSP70の遺伝子発現が低下していることがわかった。また、正常な細胞でプロモーターのNF―Yの結合部位に突然変異を起こさせると、プロモーターそのものの活性が落ちることを確認し、HSP70の発現はNF―Yによって制御されていることがわかった。
つまり、ハンチントン病モデルマウスでは、NF―Yが凝集体に結合し、機能できるNF―Yが少なくなり、HSP70を減少させていた。HSP70の減少はタンパク質の折り畳みを障害し、異常タンパク質の蓄積を促進することで、病態の進行を促進することが予想される。
NF―Yを薬剤などによって制御することで、HSP70を増加させ、病態の進行を抑える新治療法の開発につながるものと期待される。貫名チームリーダーらは次のステップとして「今後、凝集体そのもののを分解するための研究を進めていく」という。(科学、3月21日号6面)
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