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鉄の体内移行を調節する転写因子を発見
【バイオ】発信:2008/05/28(水) 08:53:37
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東京大学大学院農学生命科学研究科の小郷裕子・特任研究員、小林高範・特任助教、板井玲子・特任研究員、西澤直子教授らは、植物が土壌から鉄を取り込んだ後に体内を移行する時の調整をする新たな転写因子『IDEF2』を発見した。米国生化学会誌『Journal of Biological Chemistry(5月9日号)』に掲載された。
鉄は植物の生育に必須の元素の1つ。足りなくなると、葉が変色するなどして生産性を著しく低下させる。地球上の全陸地の67%は農作物の生産性が低い不良土壌であり、その半分は石灰質アルカリ土壌。土壌中に、鉄は水に溶けにくい水酸化第二鉄の状態で存在していることから、植物は鉄を吸収できず、鉄欠乏症になり枯れてしまう。
土壌中の溶けにくい鉄を吸収するため、イネやトウモロコシなどのイネ科植物は、根からキレート物質のムギネ酸類を分泌し、土壌中の難溶性の鉄を水に溶けやすいキレート化合物にして体内に取り込む。ムギネ酸類や、その前駆体のニコチアナミンは植物体内における鉄の移行にも関与している。
この鉄の吸収・移行の仕組みは、DNA上のシス配列に結合する転写因子がスイッチになっている。植物体内で鉄が不足するとスイッチが入り、鉄の吸収・体内移行に関わる遺伝子を発現させて効率的な鉄吸収・体内移行を行う。
研究グループは2003年、鉄欠乏で発現する遺伝子群の塩基配列から上流にある2か所のシス配列IDE1、IDE2を見いだした。さらに昨年、IDE1と結合する転写因子IDEF1を発見している。今回の研究では、シス配列IDE2に結合する転写因子IDEF2を見いだした。このIDEF2で発現する遺伝子には、IDEF1等では発現しないものも多くあったことから、IDEF1とは独立した経路でスイッチを調節していることがわかった。このIDEF2は、特に鉄の体内輸送に関わる鉄・ニコチアナミンのトランスポーターを調節しており、イネでその機能を抑制した実験を行ったところ、体内の鉄分配に異常が起きた。今後、IDEF1とIDEF2の関係など、より詳細な研究を進めていくという。
今後、世界的な人口増加やバイオ燃料の増産に対応するため、改良した作物を不良土壌で栽培することが期待されている。また、鉄は人間にも必須の栄養素であり、WHOの報告では、世界で最も多い栄養障害は鉄欠乏で約30億人以上が鉄欠乏性貧血に悩まされているという。植物の鉄吸収・体内移行の仕組みを深く理解することは、鉄欠乏耐性を持つ、あるいは鉄含有量を高めた作物を作出することなどに役立ち、世界的な問題を解決することにつながる。(科学、5月16日号4面)
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