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バイオマスからフェノール類、生産技術を開発
バイオ】発信:2008/06/11(水) 13:57:51  

  新潟バイオリサーチパークと新潟薬科大学、東京工業大学の研究グループは、デンプンを特殊な酵素を組み込んだ大腸菌と培養することで、効率よく炭素6員環化合物に導くことに成功した。炭素6員環化合物は、ベンゼンやフェノール等6つの炭素骨格を基本とした環状構造を持った有機化合物。三井化学はこれを受け、研究グループと契約し、この技術をもとにバイオマスからの発酵によって化学原料であるフェノール類の数千トン規模の工業化製法の検討を開始した。石油に依存しない新たな化学品製造方法が確立されることが期待される。

  現在、ほとんどの化学品は石油を原料にしているが、近未来に訪れるであろう石油資源の枯渇や環境汚染などから、バイオマスを利用した生物学的変換による新しい生産方法が求められている。

  東京工業大学の柿沼勝巳・教授は、抗生物質の生合成の研究中、グルコースを炭素6員環化合物に変換するDOI合成酵素を細菌から発見した。石油を原料としてきた炭素6員環化合物が光合成生産物のグルコースから得られるのは初めてのことだ。グルコースにこの酵素を作用させることで、炭素6員環の2デオキシ―シロ―イノソース(DOI)が得られる。またこのDOIはベンゼン環に変換できるため、この発見によってベンゼン環化合物をバイオマスから生産する端緒が得られた。さらに柿沼教授は、この酵素を単離し、遺伝子を解明することで、遺伝子を大腸菌に組み込むことに成功。この技術を用いてDOIを生産する遺伝子組み換え大腸菌を得ることに成功した。しかし、DOIの生産効率はまだまだ低く、実用化に向けた課題を多く残していた。

  2001年、この生産効率を上げるため、新潟バイオリサーチパークの池川信夫・東工大名誉教授が主宰する研究グループが組織され、新潟薬科大学の高木正道・教授、平山匡男・教授、鰺坂勝美・教授らの研究グループが参加した。

  高木教授は、大腸菌の遺伝子を変換してDOIの生産性を向上するため、グルコースが培養中にフルクトースやペントースといった単離糖に代謝されることに着目。それらの代謝酵素遺伝子を破壊する3重破壊株を使ってグルコースが単離糖などに代謝されにくくし、グルコースを効率よくDOIに変換することに成功した。その結果、これまで培養液1リットル中2gしか生産されなかったDOIを、約45g得ることに成功した。

  また、平山教授、鰺坂教授の研究によって、酢酸型イオン交換樹脂を用いることで極めて効率的にDOIを精製できることがわかった。これらにより、DOIの生産性と精製法の問題が解決でき、デンプンを発酵することで得られるグルコースからのDOIの効率的な生産方法が確立された。

  ハイドロキノンやカテコール等のフェノール類は、工業薬品や医薬、農薬、香料等の原料として重要な化合物であり、現在、年間数千トンから数万トンが石油を原料に製造されている。今回の技術で開発されたDOIは、これらのフェノール類に変換することが可能だ。三井化学では、世界トップレベルの触媒技術を活用し、DOIの合成を含めたフェノール類の大量・工業レベルでの製造技術確立を検討していく。

  また、DOIはその4個の水酸基がいずれもグルコースと同じ立体配置を持っており、カルバグルコース等に導くことで非常に有益な疑似糖類を得ることができる。医薬の原料としても広く使われる可能性がある。

  今回の技術ではグルコースを原料とすることから、資源として、トウモロコシ、サトウキビ、イモ類等が考えられるが、廃糖蜜、米ぬか、古米などの未利用資源の活用も期待される。研究グループでは今後、セルロースなどにも適用範囲を拡げていきたいとしている。(科学、5月23日号4面)



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