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熱反応遷移状態を観測、医薬品開発期間を短縮
【その他】発信:2008/06/13(金) 15:40:51
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電気通信大学量子・物質工学専攻の小林孝嘉特任教授らの研究グループは、熱反応の遷移状態を観測することに世界で初めて成功した。『Chemical Physics Letters』に6月掲載予定。
医薬品や機能性物質は、ほぼ全てが熱化学反応を経て合成される。しかし、その詳細な反応メカニズムは、解明されていない。色や香り等の感覚、あるいは最近では、高度な分析法によって薬などの生成は確認できるが、分子レベルで、どのように反応が進んでいるかの詳細を知る方法には限りがある。
分子レベルで見ると反応は非常に高速に進んでいる。反応過程において、反応中間体という途中の産物が幾つも出来る事が多い。反応物から最初の中間体の間、さらには、各中間体の間に遷移状態を経る事が、理論的に考えられている。その遷移状態は、フェムト秒(10のマイナス15乗秒)という短時間に起こる事が多い。従って反応の遷移状態を観測するには、分子振動を捉える高速の光が必要となる。
入射光と分子を通した後の光の波長の違いから分子振動数を調べることができる。光化学反応の遷移状態については、反応前後の分子構造の観測や理論計算は成功していたが、直接観測の成功は01年に小林氏らのグループが開発した超短パルスレーザーを用いて初めて実現した。これまで、この超短パルスレーザーは光化学反応だけに応用可能と考えられていた。
光化学反応は、反応分子の電子を励起するエネルギーよりも強い光を照射することで反応が進行する。一方、熱化学反応は、電子基底状態で分子振動を活性化させることで反応が進む。今回、超短パルスレーザーを10のマイナス15乗秒にもなるフェムト秒単位で128波長を同時に計測出来るように改良し、光を用いた熱化学反応における分子振動の実時間観測した。高速で観測出来るため分子の反応や構造変化の全貌を追跡が可能になる。この超短パルスは、電子励起するよりも弱い光で波長幅が広い。
分子振動のエネルギーと波長幅の成分間の差が等しくなると、分子振動が起こり、反応が始まる。この方法で、電子を基底状態のままコヒーレント振動で反応を進行させることが出来るようになった。この方法は、コヒーレントに位相を揃えて、分子集団を同時に励起するため反応効率が良い。
今回の研究では、超短パルスレーザーを用いてクロロホルムと酸素の反応を観測した。5フェムト秒(0.000000000000005秒)の超短パルスで試料分子の振動を励起させて反応を開始させたところ、クロロホルムの炭素と水素の結合が切れ、そこへ酸素が押し込まれることで生成物のホスゲンができる分子構造の変化過程を確認できた。
熱化学反応の分子振動をコヒーレントに励起することは、反応を高効率化できる。例えば、新規の医薬品の開発期間を従来よりも短くできる可能性がある。
この研究は、JSTの戦略的創造研究推進事業ICORP型研究『超短パルスレーザー』プロジェクトの支援を受けている。(科学、5月23日号4面)
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