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小脳シナプス可塑性と運動学習が促進するミュータントマウス作製
バイオ】発信:2008/06/26(木) 13:36:21  

〜脳の運動学習機能理解へ〜

  京都大学大学院理学研究科の平野丈夫教授は、東京大学大学院医学系研究科の三品昌美教授らとの共同研究で、小脳シナプスの情報伝達率変化と運動学習能力が両方とも高まっているミュータントマウスの作製に成功した。一部の運動学習に優れたマウスが生まれたことは、脳の運動学習機能を理解する上で大きな意味を持つだろう。5月28日の「PLoSONE」で公開された。

  学習・記憶を可能にする脳内の神経細胞は、シナプスを介して回路網を形成している。それぞれのシナプスでは、入力パターンに応じて、シグナルの強弱(伝達効率)を変化させる、学習や記憶を行っている。このシグナル変化のことをシナプス可塑性という。

  小脳におけるシナプス可塑性の一つに長期抑圧と呼ばれる現象があり、運動学習を支えるメカニズムだと考えられてきた。小脳皮質の神経回路網では、顆粒細胞から信号が入力されると、シナプス網を通してプルキンエ細胞が出力をし、身体を動かすための命令を出している。この時、例えば、身体のバランスを崩すといった“悪い”結果が繰り返し出ると、下オリーブ核神経細胞から誤差信号が入力され、神経回路網が「学習」する。その結果、次回からは顆粒細胞からの入力をシナプス可塑性によって弱め、同じ出力を出さないようにする。これが長期抑圧だ。

  研究グループでは以前、グルタミン酸受容体デルタ2サブユニット分子が長期抑圧に必要であることを報告。今回の研究では、グルタミン酸受容体デルタ2サブユニット分子と結合するタンパク質「デルフィリン」に着目し、デルフィリン欠損ミュータントマウスを作製し、シナプス機能と運動学習能力を調べた。デルフィリンは、長期抑圧が起こる小脳プルキンエ細胞上のシナプスに局在している。

  長期抑圧を調べたところ、デルフィリン欠損ミュータントマウスでは、通常マウスより少ない回数の神経活動で長期抑圧が引き起こされることがわかった。また、これまでに細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇が長期抑圧に必要なことが分かっているが、ミュータントマウスでは、長期抑圧が起こる際のカルシウムイオン依存性が低下していることも分かった。つまり、ミュータントマウスでは、カルシウムイオン濃度上昇が小さくても、少ない回数の神経活動で長期抑圧が引き起こされるという。

  次に、運動学習能力を調べるため、視運動性眼球運動の適応現象を利用した。マウスの眼前で縦縞模様のスクリーンを動かし、その動きを追う眼球の動きを計測すると、初めはスクリーンの動きより小さな動きをし、次第に大きく的確に追従するように適応していく。ミュータントマウスでは、この適応が通常のマウスより倍近く速くなった。

  ただし、別の運動試験では有意差が出なかったことから、平野教授は「視運動だけに関与しているかもしれない」という。今回のミュータントマウスは一つのモデルとなり得るるものであり、今後の研究によって、どの様な運動にどういった分子メカニズムで関与しているのかを明らかにできれば、記憶や学習に対する理解は格段に深まるだろう。(科学、6月13日号4面)



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