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衝撃に強い超強度鋼を開発
【その他】発信:2008/06/27(金) 13:50:45
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物質・材料研究機構新構造材料センターの木村勇次主任研究員らはこのほど、特殊な合金元素を多量に添加することなく、衝撃を加えても壊れにくい超高強度鋼の開発に成功、さらに60〜マイナス60度Cでは温度が下がるほど鋼の衝撃吸収が上昇するという、既存鋼とは逆の靭性の温度依存性も見いだした。この成果は米誌『サイエンス5月23日号』に掲載された。
次世代の新鋼構造物の実現や二酸化炭素削減という観点から輸送機のさらなる軽量化を目指して、リサイクル性に優れた単純な低合金組成で引っ張り強さが1500メガパスカル(MPa)超級の高強度鋼およびその部材の開発への期待が高まっている。しかし、強度が高くなると延性が低下し、材料は壊れやすくなる。超級低合金鋼では1500MPa以上の強度レベルでとくに靭性が低いことから構造部材用としての適用が制限されてきた。
物質・材料機構では、強度2倍・寿命2倍の超鉄鋼材料の実現を目指し、超鉄鋼プロジェクトを97年度から05年度まで推進した。その中の研究テーマの1つとして耐遅れ破壊性、疲労特性に優れた1500MPa超級低合金鋼の開発、および低合金鋼を用いた超高力ボルトの創製を試行した。しかし、耐遅れ破壊性を向上させた1800MPa級鋼でも靭性が極めて低い問題点があった。つまり、1500MPa超級高強度鋼の高靭性化は鉄鋼材料研究に残された大きな課題の1つであった。そこで、同機構では06年からの新構造プロジェクトで、高靭性高強度の開発をテーマの1つに研究を推進してきた。
具体的には、中炭素低合金鋼の焼戻マルテンサイト組織が元来微細な結晶粒の基地中に炭化物粒子が微細に分散した複相組織であることに着目。0.4%C−2%Si−1%Cr−1%Mo鋼の焼戻マルテンサイト組織に500度Cで減面率約77%の多パスの溝ロール加工を施すことで、断面積2cm2、長さ約1mの棒材において、短軸の平均粒径が約260nmで、圧延方向繊維集合組織を有する伸長結晶粒の基地中に50nm以下の炭化物粒子が分散した超微細結晶組織を得た。その結果、従来は金属材料の高強度化とはトレードオフの関係にあるとされていた靭性を1800MPa超級超高強度鋼で著しく向上させることに成功した。
通常、耐力が1400MPaを超える焼戻マルテンサイト鋼を衝撃試験した場合、衝撃方向に急速に割れが伝播してほぼ真二つに破断する。しかし、開発鋼は、木材や竹を織ったときのような衝撃とは直角に割れが進展する層状破壊を示し、割れが衝撃方向には進展しにくい。これにより、衝撃吸収エネルギーが大幅に向上した。
今回の研究は、上記の超微細結晶粒組織を創製し、層状破壊を制御した点に大きな特徴がある。すなわち、鉄の{100}へき開面を多く含み低温域で脆性破壊が起こりやすい結晶面を伸長結晶粒の長軸方向と平行(衝撃方向とは垂直)に形成。その一方で、同面を多く含み脆性破壊が起こりにくい結晶面を伸長結晶粒の短軸方向と平行(衝撃方向とは平行)に形成させることで伸長結晶粒の長軸方向に層状破壊が起こりやすい組織構造とした。その結果、超微細結晶粒組織鋼では60〜マイナス60度Cの温度域での鋼の耐力が高くなるほど層状破壊が促進され、衝撃吸収の増大につながったのである。
今回の組織制御技術は、中炭素低合金鋼の焼戻マルテンサイト組織を500度C付近で既存の溝ロール圧延機を用いて加工を施すという単純な加工熱処理であるため汎用性が高く、室温では硬くてもろいため冷間成形が困難であった材料にも適応可能である。とりわけ、延性脆性遷移挙動を示す材料の靭性の向上に有効である。
同機構では今後、高強度鋼の実用化に必要な遅れ破壊、疲労破壊に関するデータを蓄積するとともに、層状破壊を起こすために必要な組織パラメーターをさらに明確にして、より効率的な製造技術を確立する考えで、シャフトからボルトなどの複雑な形状の部材へこのシーズを展開していきたいとしている。(科学、6月13日号5面)
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