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日本の論文シェア上昇、サイエンスマップ2006作成
その他】発信:2008/06/30(月) 11:34:03  

  科学技術政策研究所は、01年〜06年に全世界で発行されたトップ1%論文(各分野で被引用回数が上位1%の論文)約5万件の共引用関係を分析し、アクティビティの高い研究領域124領域を特定するとともに、それらの相互関係を俯瞰する「サイエンスマップ2006」を公表した。

  政策研では2年前にサイエンスマップ2004を公表しており、今回の結果と比べると、注目研究領域における日本の論文シェアは9.6%と0.5ポイント上昇したほか、4割程度の注目研究領域が拡大・融合・分裂といったダイナミックに変化していることなどが明らかになった。

  生命科学系の研究領域では、ポストゲノム研究が、主に植物や菌類を研究対象にする植物科学研究と、動物や菌類を研究対象とする心臓・血管疾患研究、脳研究、肥満研究、ガン研究、感染症・免疫研究とをつなげつつあることが分かった。

  これは、より複雑で広範な生命現象の調節機構を理解しようとする生命科学研究の流れが関係している。動物や植物における生命現象に関する研究は、長らくDNAからRNAへの転写調節機構の解明に主眼がおかれてきた。しかし、2000年代に入るとこれに加えて、RNAiを始めとするRNAレベルでの調節機構、タンパク翻訳後の調節機構、生体内でのタンパク質の局在調節等の研究が多く発表されるようになった。その結果、サイエンスマップ2004の「エピジェネティックによる遺伝子転写制御の研究」と「植物生命制御および維持機構の解析」が融合し、2006では「生命現象の複階層的な調節機構」が生まれた。

  また、タンパク質研究の位置づけが変化してことも影響している。2004では「プロテオーム研究」は、化学合成と生命科学系の間のやや孤立した位置にあったが、2006では、継続された研究領域の「同位体標識/定量的質量分析/タンパク質解析」がポストゲノム研究領域群の中に位置している。タンパク質の質量分析は従来、化学の要素を強く持つ研究だったが、ゲノム解読が進んでいく中で、タンパク質を網羅的に調べる研究に注目が集まり、質量分析の手法が生命科学系の研究に積極的に取り込まれ、現在ではポストゲノム群の手法の一つとして定着している。

  ポストゲノム研究と植物科学研究とのつながりが強くなったことで、研究領域の性格が変化し、2004の「植物のストレス応答」が、2006では「植物の環境ストレス応答/代謝プロファイリング/細胞構造とリン脂質代謝」と「植物感染防御/植物免疫」に分裂した。2000年代に入り、モデル植物における遺伝子同定、遺伝子間ネットワークの研究、トランスクリプトーム解析、メタボローム解析などの解析が活発化し、より詳細な研究が進み、それぞれの研究コミュニティを形成するようになったと考えられる。

  ナノサイエンスは着実に発展している。2004では「ナノ構造体の作成および分子/デバイスへの応用に関する研究」の1構成要素だった「分子マシン・単分子導電体による超分子ナノデバイスに関する研究」「DNAナノ材料・デバイス」が独立した研究領域として見出されるまでに拡大した。またナノサイエンスと化学合成を繋ぐ研究が増えていることもわかった。

  物性研究では、主に量子コンピューティングや超電導についての注目研究領域が活性化している。「強磁性半導体スピントロニクス」「半導体中でのスピンの電気的制御/固体素子による量子コンピュータ」が論文量を増やした。

  サイエンスマップでは、日本のコアペーパーシェアが平均9.6%と上昇した。

  これを牽引しているのが「アンテナ系と電荷分離系をまねた人工光合成モデルの構築」であり、日本論文比率は80%を占めている。光合成初期において太陽光はアンテナ系によって集められ、電荷分離系へそのエネルギーを効率よく移動させる。電荷分離系ではこのエネルギーを電子の流れに変え、電子とホールを隔てることで、最終的に化学エネルギーに変換する準備を行う。この研究領域は、これらの過程を有機化学的に合成されたモデル分子を用いて部分的にまねたものが中核となっている。特に電荷分離系は、京都大学大学院物質・細胞統合システム拠点の今堀博・教授の発見したフラーレンの特異な電子移動特性を基礎に、フラーレンを用いた光合成モデルが優れた性能を示している。

  また、124の注目研究領域中35領域で日本のコアペーパーシェアが9%以上と、相対的に日本の存在感が大きいことが分かった。

  物理学では、19注目研究領域中14領域で日本の存在感が大きく、さらに10領域ではコアペーパーが15%以上を超えていた。その中で最も日本論文比率が高いのは「高温超電導スペクトロスコピー/新奇電子相(44%)」で、東京大学大学院理学系研究科の内田慎一・教授が中心となっている。

  化学では、16注目研究領域中8領域が9%を超え、15%を超える領域は「アンテナ系と電荷分離系をまねた人工光合成モデルの構築(80%)」と「高分子系ナノコンポジット(33%)」(岡本正巳・豊田工業大学工学部講師)、「触媒的不斉合成(18%)」(林民生・京都大学大学院理学研究科教授)。

  生命科学系では、植物・動物学において、8注目研究領域中6領域で9%を超えた。特に「植物―微生物相互作用」(下田宜司・かずさDNA研究所特別研究員)が22%と高い。また臨床医学では、「グレリン/機能と病態生理学的意義」(寒川賢治・国立循環器病センター研究所長)が34%と高い。(科学、6月20日号1面)



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