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インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼの構造
バイオ】発信:2008/08/28(木) 14:51:49  

  横浜市立大院国際総合科学研究科の尾林栄治特任助教、朴三用准教授らは、筑波大基礎医学系、自治医科大と共同で、インフルエンザウイルスの複製に中心的な役割を果たしているRNAポリメラーゼのサブユニット間の構造を世界で初めて原子レベルで解明した。

  近年、鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染による世界的大流行が懸念されており、こうした新型ウイルスのRNAポリメラーゼが新規薬物ターゲットとして注目を集めている。今回の成果は英誌『ネイチャー』オンライン版(7月27日)に掲載された。

  共同研究グループは、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼPA−PB1サブユニット間結合の構造解析において、まずPAのC末端領域(239−716)とPB1のN末端領域(1−80)とが結合した複合体を調整し、結晶化に成功。この結晶を用いてX線結晶構造解析を行い、PA−PB1複合体の原子レベルの構造を明らかにした。

  その結果、PAはこれまでに解明されているタンパク質にはない新規な形をしており、13個のαヘリックスと9個のβシートで構成されていることが判明した。また、その3つのヘリックスによりトンネルが構成されており、そこにPB1のN末端が突き刺さるようにして結合していることがわかった。その際、PB1は3(10)ヘリックスと呼ばれる構造をとっており、タンパク質間結合として非常に珍しい様式であることが確認された。

  さらに、PA−PB1複合体の立体構造上、PAとPB1の結合に極めて大きく貢献していると思われるアミノ酸を、その結合を不安定にさせるようなアミノ酸と置換し、結合能とRNAポリメラーゼの転写活性を解析したところ、PAサブユニットのVal636、Leu640、Leu666とTrp706を置換した変異体は、PB1のN末端領域に結合できなくなり、その転写活性も著しく低下していることが確認された。このことから、今回の結果で明らかになったPAのC末端領域(239−716)とPB1のN末端領域(1−80)間の結合が、RNAポリメラーゼ全体の機能に極めて重要な役割を果たしており、この結合能の欠失が直接ポリメラーゼ全体の不活性化につながることが示唆された。

  従来の抗インフルエンザ薬はウイルスが感染することを防ぐものであり、直接複製を阻害しないので、感染後時間が経過してしまうと効果が薄れてしまうことが問題となっている。また、効果が大きいとされるタミフルの備蓄に多額の予算がつぎ込まれているが、すでにタミフル耐性型の鳥インフルエンザが発見されており、異なる観点から新薬開発に取り組む必要があるとされている。

  RNAポリメラーゼのサブユニット間の立体構造が明らかにされたことによって、ウイルス複製に必須な部位を創薬ターゲットとすることが可能となった。今後は、この構造を基にしたPA−PB1結合阻害剤が設計され、抗インフルエンザ薬として応用されることが期待される。さらに、こうした新薬は、ウイルス変異に強く、またこれまでのワクチンとは違ってどんなタイプの新型インフルエンザウイルスにも効果が出る画期的なものになるとみられる。(科学、8月8日号4面)



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