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統合失調症マウス、脳に未成熟な部分
【バイオ】発信:2008/10/03(金) 09:10:05
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統合失調症は100人に1人が発症する精神疾患だが、その発症メカニズムなどはほとんど分かっていない。藤田保健衛生大学総合医科学研究所の宮川剛・教授らは、統合失調症のモデルマウスを作製し、大人のマウスであるにも関わらず、脳の記憶を司る海馬・歯状回部分に未熟で未発達な部分があることを世界で初めて発見した。
また、亡くなった多くの統合失調症患者の海馬では、この未成熟な海馬・歯状回と同様の状態が見つかっていることから、統合失調症の原因の一つだと考えられるという。これまで面接などで判定されてきた統合失調症の客観的診断や治療法の開発につながるものと期待される。日本医科大学、国立精神・神経センター、田辺製薬、放射線総合医学研究所、東北大学、東京工業大学、名古屋大学との共同研究。英国のオープンアクセス科学雑誌モレキュラー・ブレインのオンライン速報版で公開された。
統合失調症や双極性気分障害は、人種や地域に関係なく、総人口の約1%がかかり、十分な治療法が確立されていない深刻な精神疾患だ。客観的な診断が難しく、精神症状や行動異常などの主観的な診断方法しかないため、原因遺伝子は特定されておらず、また有力な候補が見つかったとしても、それが直接、治療薬のターゲットになる可能性は低い。
そこで研究グループは、精神疾患の背景に潜む本質的な異常(疾患の中間表現型)の候補を見出し、それをもとに精神疾患を見直し、その再分類を試みるというアプローチで研究を進めた。研究グループは、90以上の遺伝子改変マウスの系統について、網羅的に行動異常を検査する網羅的行動テストバッテリーを行ってきた。
その結果、カルシウムカルモジュリン依存性酵素CaMKUαのヘテロ欠損マウスでは、放射状迷路で調べられる作業記憶が顕著に障害されることを見出した。このマウスは、集団でゲージに飼育すると兄弟を殺してしまうキレるマウス。また、活動性が亢進しており、さらにその活動性には2〜3週間程度のゆっくりした周期的な波があることが分かった。オスのマウスでこうした気分の波が見つかったのは初めてで、双極性気分障害で見られる気分の波と似ている。
また、このマウスの脳を摘出し、遺伝子解析を行ったところ、海馬では2000以上もの遺伝子プローブが週齢や経験に非依存的に顕著な発現量変化を示していた。発現量低下の度合いが強いトップ20の遺伝子について、脳内での発現を調べたところ、このうち5つが海馬・歯状回で特異的な発現を示していた。
海馬・歯状回は、大人の脳でも神経新生を起こしている場所だが、このマウスの海馬・歯状回ではほぼ全ての神経細胞が未成熟なままであるという構造異常があることが判明した。つまり、大人であるにも関わらず、海馬・歯状回だけはほぼ完全に未熟であるという状態が初めて見つかった。
さらに、このマウスの海馬・歯状回の遺伝子情報を使って、ヒトの死後脳の海馬の遺伝子発現パターンを統計学的に解析したところ、全てのヒトの大きく2つのグループに分けられることが分かった。一方のグループでは、成熟神経細胞のマーカーであるカルビンジンが半分以下になっていた。さらにこのカルビンジンが少ないグループに20人の統合失調症患者のうち18人が含まれていた。
こうしたことから、海馬・歯状回の異常に加えて、環境要因などが加わることで、一部の統合失調症や双極性気分障害などの精神疾患が発症すると考えられる。つまり、未成熟な海馬・歯状回を持つ人は、統合失調症にかかりやすくなっていることが示唆される。
宮川教授は「現在、未成熟な海馬・歯状回を成熟させる方法を探しています。これができればヒトの精神疾患の治療にも応用できる可能性があります。また、生きた人間の海馬・歯状回が未成熟かどうかを調べるため、PETを使った共同研究も進めているところです」と話している。(科学、9月19日号2面)
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