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求愛の歌を歌う時、オス鳥の脳は幸せを感じる
【バイオ】発信:2008/10/24(金) 11:49:15
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オスの鳥がメスに求愛の歌を歌っている時、オスの脳内ではドーパミンが放出され、幸せな気持ちになるが、単にさえずっている時にはドーパミン作動性神経細胞は活性化しない。理研脳科学総合研究センター発声行動機構研究チームのヘスラー・ニール・チームリーダーとフワァン・ヤ・チュン研究員は、キンカチョウを使った実験で、従来から考えられていた報酬系神経回路の活動はドーパミン作動性神経細胞が関わっているという説を実証した。
ゲームやギャンブルの習慣性や麻薬の依存性などと脳機能や行動との関係を理解する上で重要な成果だ。米国・PLosONEに掲載された。
ヒトを始めとする動物の脳は、食物や性行動などの報酬刺激に対し、快感を得る回路を持っている。これは、脳内腹側被蓋野(VTA)のドーパミン作動性神経細胞の活動が増加するためだと考えられている。また、哺乳動物にアンフェタミンやコカインなどを投与すると、VTAのドーパミン作動性神経細胞へのシナプス伝達が著しく増強され、麻薬使用に伴う脳機能の低下や慢性的な中毒症状に関連するとされている。しかし、シナプス伝達の増強が、人工的な薬ではなく、自然の報酬刺激によって引き起こされるかどうかを調べた研究はほとんどない。
研究チームは、社会性行動の代表例として、キンカチョウの恋歌に注目。キンカチョウのオスは、メスに求愛するときは恋歌を、メスがいないときには歌の練習や周囲の鳥とのコミュニケーションのためにさえずる。これまでに、メスに歌っている時だけ、VTAの多くの細胞の活動が上昇することを見出している。
今回の実験では、オスのキンカチョウ32羽を数日間隔離し、実験の日にオス1羽だけで歌わせる、オス1羽にメス2羽を見せて歌わせる、オス1羽にメスを見せるが歌おうとすると実験者が邪魔をして歌わせない、という3つの状況に1時間おいた。その後、VTAの神経細胞のシナプス応答を記録したところ、オス1羽だけのグループではシナプス応答は変化しなかったが、残りの2グループではドーパミン作動性神経細胞へのシナプス伝達は著しく増加した。
これまでの実験と合わせると、これらのシナプス伝達の増強は、1羽で隔離された後、久しぶりに1時間メスを見たことによる興奮由来だと考えられるという。また、恋歌の後のVTAにおけるシナプス伝達の増強は、ドーパミン作動性神経細胞へのシナプスに限られており、ドーパミン作動性神経細胞そのものが活性化したことを意味する。
今回の研究では、麻薬と同様、メスへの恋歌という自然の社会性行動によってもVTAのドーパミン作動性神経細胞へのシナプス伝達増強が起こることを明らかにした。このことは、メスへの恋歌はオスにとって報酬になることの明らかな証拠となる。また、自然の報酬と人工的な薬という報酬が、同じように脳機能を変化させうることを示した。
これにより、キンカチョウの社会性行動がどのように脳機能に作用するかを詳細に調べることが可能になる。また、ヒトと鳥は進化系統樹の上では離れているが、報酬系神経回路については同様の脳機能を持ち、同じような社会的局面で似たような感情を持つと予想されることから、ヒトの社会性行動と脳機能の関係を理解する上でも役立ちそうだ。
さらに、この報酬系神経回路のメカニズムを解明できれば、ゲームなどの習慣性や麻薬などの依存性を断ち切る研究にも役立つだろう。(科学、10月10日号4面)
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