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微生物発酵の代謝変動、リアルタイムで解析
バイオ】発信:2009/04/01(水) 11:49:02  

  我々の腸の中では、いわゆる悪玉菌や善玉菌といった多種多様な腸内細菌が共存し、腸内微生物叢(腸内フローラ)を形成している。この腸内フローラの状態が健康を左右しているといわれているが、どういった作用機序で宿主の健康維持や疾患に関わっているのかは、よく分かっていなかった。

  理研植物科学研究センターの菊池淳ユニットリーダー、理研免疫アレルギー科学総合研究センターの福田真嗣・基礎科学特別研究員らは、こうした微生物発酵の反応を、核磁気共鳴(NMR)によりリアルタイムでモニターし、代謝表現型を解析する新手法を開発した。米PlosONEに15日掲載された。

  ヒトや動物の腸管内に存在する腸内フローラは、ヒトの健康維持に有用であると同時に、有害な面があることも明らかになってきている。いわゆる悪玉菌の増加は、ガン・糖尿病・高血圧・心臓病などの生活習慣病、アレルギーや炎症性腸疾患アドの免疫疾患や各種感染症を誘発するとともに、老化との関連も示唆されている。一方、ビフィズス菌や乳酸菌など善玉菌による疾患の改善や予防効果が明らかになるとともに、これら善玉菌そのものであるプロバイオティクスを考慮した投与の有用性が、健康維持、予防医学の面からも注目されてきている。例えば、植物に多く含まれるリノレン酸は、そのままでは生理活性がなく、共役リノレン酸に代謝されることで初めて自己免疫疾患の向上などの機能を得る。

  しかし、現状では、これら腸内フローラが、どのような作用機序で宿主の健康維持や疾患の改善に関わっているのかについて、科学的根拠が非常に乏しい状態となっている。

  そこで研究グループは、腸内細菌Butyrivibrio fibrisolvensの3種類の菌株を用い、NMRのガラス管内で培養液などの模擬栄養分を混在させて、12時間程度これらの微生物を生育させながら、代謝変動をリアルタイムで計測する新手法を開発した。その上で、リノレン酸が、ヒトの腸内や牛の消化管内に生息する腸内細菌によって代謝され、生理活性を持つ共役リノレン酸などの共役脂肪酸に代謝される過程を、NMRを用いて詳細に解析した。

  開発したNMR管中での微生物生育と、その代謝変動のリアルタイム計測を、3種類の菌株へのリノレン酸添加実験で検証した。それぞれの菌株が発酵する際の代謝動態を、5分ごとに連続的に計測して、H―NMRスペクトルで得た100余りのデータを数値化し、統計数学を用いて解析。その結果、リノレン酸添加時の菌株の代謝能、発酵産物の動的な違いを検出でき、さらにB.fibrisolvensによるリノレン酸代謝は生体防御反応の一環であることが分かった。また、腸内の嫌気性発酵産物であり、抗ガン作用との関係が示唆される酪酸の産出、さらには生産される代謝物と他の代謝物との経時的な相関関係が、STOCSY法という2次元相関解析法で見いだされることも確認できた。

  一般に微生物による発酵生産では、有用物質生産のタイミングを最適化することが重要になる。今回開発した手法は、発酵生産を止めることなく、腸内細菌が産生する代謝産物をリアルタイムで計測することができるため、発行停止のタイミングなどの解析も行える。

  また、炭素13で標識下リノレン酸を使うことで、3種類の菌株が有する脂肪酸代謝酵素の違いに応じて、リノレン酸が代謝され、共役リノレン酸が産出されることが分かった。リノレン酸代謝の最終産物はバクセン酸であるため、共役リノレン酸はリノレン酸代謝の中間体として産出されることも分かった。こうした共役脂肪酸の産出タイミングを検出できたことは、今後、プロバイオティクスとして、より機能性を持たせるために、さらには発酵タンクなどで工業的に生理活性物質を産出させるためのプロセスモニタリングなどへ応用できると期待される。

  今回の研究はリノレン酸を対象としたものだが、単離された微生物だけでなく、複合微生物型、藻類や原生動物類など、NMR管内で代謝活動が可能なすべての生物種に応用できる可能性があるため、システム生物学を飛躍的に進めることが期待される。(科学、3月20日号1面)



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