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語学力に関する脳部位、左前頭葉の下前頭回に存在
【バイオ】発信:2009/05/18(月) 23:47:24
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脳部位の左右差によって、第2外国語の習得能力が異なる。東京大学大学院総合文化研究科の酒井邦嘉・准教授らは、英語の文法能力と高い相関を示す局所体積の個人差を磁気共鳴映像法(MRI)で調べたところ、語学の適性と密接に関係する脳部位が左前頭葉の下前頭回であることを特定した。左前頭葉の下前頭回が、対応する右前頭葉の部位より大きい人は、第2外国語の文法能力が高いという。酒井准教授は「今回の成果により、左右差が相関することは分かったが、英語をたくさん勉強したから左の下前頭回が大きいのか、もともと下前頭回が大きいから英語の能力が高いのかはよく分かっていない。今後の課題」と話す。4月27日に米科学誌ヒューマン・ブレイン・マッピングのオンライン版に掲載された。
研究グループはこれまで、脳の文法中枢の活動が学校の授業を通して得られた英語の成績に相関して高まることを初めて直接的に証明し、次いで中学・高校の学習を経て英語の知識が定着してくる大学生において、英語の習熟度が高くなるほど文法中枢の活動が節約されることを明らかにした。さらに外国語としての英語力と密接に関係する複数の脳部位を特定することに成功し、6年以上の英語接触量の重要性を強く示唆する結果を得ている。
今回の研究では、語学の適性に関係する脳部位を、年齢や習得期間と独立した要因として明らかにするため、95名の参加者の英語の文法能力を適性テストによって測り、これと高い相関を示す脳の局所体積の個人差をMRIで測定した。
参加者は、日本語を母語とする右利きの中高生78名と英語圏以外の国から来日している留学生17名。中高生は東大教育学部附属中等教育学校で、中学2年生と高校2年生を3年間にわたって調査。2ヶ月間の授業時間中に、英語動詞の文法的な使用法に関するトレーニングを実施し、そのトレーニング後の調査結果を使用した。留学生は、ブルガリア語・中国語・クロアチア語・インドネシア語・フィリピン語などを母語とする、6歳以降に6年以上英語を習得した20〜41歳の成人留学生。 用いたテストは、英語の文を文字で提示し文法的に正しいかどうかを答える「文法課題」と、同じ文で用いられている単語の綴りが正しいかどうかを答える「綴り課題」。文法能力と語彙知識を調べることができる。これらのテスト成績に加え、年齢、性別、利き手指数の違いを含めて、脳の局所体積との相関を解析した。
脳の灰白質や白質の局所体積はMRIを用いたVBM法による形態学的な解析を行った。また、脳画像の各画素ごとに、灰白質の局所体積から、左脳と右脳の対応部位の非対称性を測る非対称性指数(AI)を計算した。
その結果、左脳の下前頭回(前頭葉下部)にある脳部位の非対称性指数は、文法課題の成績と選択的に相関することが分かった。この場所は、同様の課題を用いた脳機能イメージング研究において脳活動が観察された場所のすぐ内側で、どちらも文法中枢に含まれる。
詳しく解析したところ、左脳の下前頭回の非対称性指数は文法課題の成績と正の相関を示したが、年齢とは負の相関を示すことが分かった。つまり、下前頭回の左側方化はプン法能力が高いほど顕著で、年齢が高いほど左側方化が目立たないということから、思春期以降の成長や英語の習得経験が左側方化を促進する可能性を除くことができる。
一方、綴り問題の成績や性別、利き手指数については、左脳の下前頭回の非対称性指数には有意な相関はなかった。また、下前頭回の左側方化には、左脳の文法中枢の体積増大と右脳の対応部位の体積減少の両方が寄与することが分かった。
さらに同様の解析を中高生のみで行った場合も同様の結果が出たことから、中等教育という限られた期間に英語を習得しただけでも、下前頭回に文法能力と相関した明瞭な個人差が観察できるという。
これらの結果は年齢や習得期間と独立した現象であり、下前頭回の左側方化という脳の構造的な基盤が文法獲得の適性に関係するを示す画期的な成果だ。酒井准教授は「下前頭回の左側方化が強ければ強いほど、左下前頭回に対する右下前頭回からの抑制が相対的に弱いため、左脳にある文法中枢の可塑性(柔軟性)が増す可能性がある」という。
今回の研究成果により、脳の構造が語学力の個人差に関係することが世界で初めて明らかになった。今後、研究が進めば、個人の特性に合わせた教育プログラムの開発にもつながるかもしれない。(科学、5月1日号1面)
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