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正確に記憶を保存、シナプスタグ仮説を初実証
バイオ】発信:2009/06/02(火) 18:36:16  

  三菱化学生命科学研究所の井ノ口馨グループリーダー、岡田大助・主任研究員らは、ラットを使った研究で、数万個のシナプスの中から特定のシナプスだけに正確に記憶タンパク質を配達する仕組み「シナプスタグ仮説」を世界で初めて実証した。サイエンスの5月15日号に掲載された。

  ある出来事を経験して記憶が形成される時、シナプスを介した神経細胞間の情報伝達効率が変化する。この変化はシナプス部にあるタンパク質の修飾によって起こり、数分から数時間で消失する。一方、強烈な経験では長期記憶が形成されるが、この時はシナプスを介した情報伝達の効率変化も数日以上にわたって維持される。この時、細胞体で遺伝子発現の変化が起き、そこで合成されたタンパク質が樹状突起を経由してシナプス部に配達されて働くことで、伝達効率が長期的に変化する。これらの記憶関連タンパク質は、その記憶に対応した特定のシナプスだけに配達され、そのシナプスの伝達効率のみを長期的に変化させることで、長期記憶を正確に保存すると考えられている。

  ところが、1つの神経細胞には数万個のシナプスがあるため、どのような仕組みで特定のシナプスだけに配達されるのかが未解決の大きな問題だった。

  この疑問に対する答えの1つとして、シナプスタグ仮説が提唱されている。初めに出来事を経験した時に活動した特定のシナプスにシナプスタグと呼ばれる目印が付く。一方、細胞体で合成された記憶関連タンパク質はいったん全てのシナプスに輸送されるが、目印が付いたシナプスに配達されたものだけが目印に捕捉されて機能するという考えだ。シナプスタグ仮説は、覚えた時と同じ内容の記憶を保持する、すなわち記憶の正確さと安定性に関わる仕組みをうまく説明しているが、この仮説が正しいかどうかは実証されていなかった。また、その目印の実体も不明だ。

  研究グループは、長期的なシナプス変化が起きる時に、細胞体で合成される記憶関連タンパク質の1つVesl―1Sタンパク質にGFPを融合させたタンパク質をモニターとして、ラット脳の海馬の神経細胞にVesl―1Sを発現させた。GFP蛍光を指標として、この融合タンパク質の局在場所をリアルタイムで観察した。

  その結果、細胞体で合成されたタンパク質は、まず全ての樹状突起に万遍なく輸送されること、シナプスが活動していない場合は、樹状突起部に留まっていること、シナプスが活動した時は、活動したシナプスのスパインだけに選択的に取り込まれること、取り込みは、記憶形成に重要であることが知られているNMDA型グルタミン酸受容体により調節されていることが分かった。これらの結果から、シナプスタグ仮説が正しいことを初めて実証した。また、シナプスタグの実体は、樹状突起からスパインへのタンパク質の取り込みの制御であることも判明した。今回の発見で、記憶を正確に安定して保持するための仕組みが明らかになった。

  井ノ口グループリーダーは「NMDA型グルタミン酸受容体を刺激することでゲートが開き、記憶関連タンパク質が特定のスパインに取り込まれることが分かった。また、ゲートに異常があると本来、短期記憶として消えてしまうものまで記憶されてしまうため、情報が混乱し、幻覚や幻聴などにつながっている可能性が高い。今後、ゲートの分子的な実態を明らかにしていきたい」と話す。(科学、5月22日号2面)



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