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世界初、1細胞の挙動を観ながら分子探索
ナノテク】発信:2009/06/11(木) 17:03:30  

〜広島大、ビデオ・マススコープを実現、再生医療や創薬の研究加速へ威力〜

  生きた細胞を光学顕微鏡で観察しながら、それが動いている瞬間に、ほとんどリアルタイムで質量分析する画期的な新技術「ビデオ・マス(MS)スコープ(細胞ビデオ質量分析法)」を、広島大学大学院・医歯薬学総合研究科の升島努・教授らが開発した。1個の細胞について観察できるものであり、リアルタイムで分子解析する世界初の新技術として創薬メーカなどが注目している。升島教授は「iPS万能細胞などの再生医療研究や、医薬品開発を加速させることができる新基盤技術だと考えており、本技術を用いた創薬開発研究などのプロジェクトを是非展開したい」と意欲的だ。

  この新技術は光学ビデオ顕微鏡で生きた1細胞を観察しながら、細胞中の分子を超微細な針で吸い取り、これにイオン化溶媒を混ぜて質量分析計のイオン源へ移し、高電圧をかけ一気に噴射して分子をイオン化することで、細胞中の分子を効率よく質量分析するものである。細胞中の分子を吸引する針は独自開発した。先端の直径が数μmというガラス製の管で「ナノスプレーチップ」と呼んでいる。この方法により1細胞の挙動を観ながら分子解析し、どういう物質がどれ位あるか、その種類や量を調べることができるようになった。

  生命科学の分野では、たくさんの細胞の集合体をすり潰し、これを各種分析法で研究している。「生体の応答は1個の細胞の応答ではなく膨大な細胞の平均値なので、確かにこの方法は正しい。しかし生命現象の解明には問題がある。我々はビデオ光学顕微鏡で1細胞の観察を続けてきたが、同じ刺激に対しても個々の細胞の反応は多様で、それら異なる細胞の変化を個々に正確に観る方法が正しいだろう」と、升島教授は指摘している。

  そこで、正にいま動いている1細胞の現象を解明しようと研究を重ね、今回の新技術の開発に行き着いたという。例えば、アレルギー反応の現象を生きた1細胞で観察すると、アレルギー物質が生体内に入ったことを伝える信号が流れた瞬間に、細胞中のヒスタミンがあると言われる顆粒が弾ける様子が分かる。しかし、このアレルギー反応の瞬間に、本当にヒスタミン等が生きた細胞の顆粒中に存在しているかどうかを調べる方法は、これまでなかった。

  細胞にレーザ光を照射してイオン化する方法を試してみたが、1細胞中の分子の数が100個程度しか計測できず、本当は数千から数万程度の分子があるはずなのに、少なすぎて感度が悪く、しかも細胞が死んでしまうという問題があり断念した。

  そこで細胞中の分子を網羅的に調べる方法として、細胞に針を突き刺して中の分子を吸引し、これを質量分析機の中で霧のように噴射して解析する技術の研究に取り組み、7年間もかけてようやく実用レベルのものを開発した。この方法なら、細胞中のアレルギー細胞の顆粒だけ捕捉したり、神経分化細胞のみ捕捉(写真参照)することができる。

  現在は、これまで手作業で行っていた細胞に針を刺して吸引する過程をロボット化することなどに取り組んでおり、分析のスピードアップや効率化、精度向上などを進めている。

  この新技術は、(1)細胞内分子動態の解明(生命現象解明の加速) (2)再生医療における分化制御因子の探索と機能解明(iPS万能細胞も含めた再生医療分子解析の加速) (3)臨床分野における新しいガンマーカーなどの探索や、健常人、健康モニタリング指標の探索など新たな分子診断研究の加速 (4)新薬候補分子の発見スピードアップや、多成分医薬品の開発など、医療・創薬分野における新開発に威力を発揮する可能性を秘めていると、升島教授は意義を強調している。

  升島教授は、すでにカルフォルニア州と日本の間の「iPS細胞研究振興に向けたJST(科学技術振興機構)ーCIRM研究交流ワークショップ」に参加が認められ、この手法を披露することになっている。

  またカナダ政府から、セロミクス(細胞分子解析)大型国策プロジェクトへの参画の誘いも来ている。

  「いま世界最先端研究の強化が言われているが、本技術については海外からも注目されており、その前に、国内での研究や産業界への貢献を期待している」と話しており、この新技術を活用した日本での高速創薬研究プロジェクトの展開などを待望している。(科学、5月29日号1面)



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