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遺伝子改変霊長類作出、導入遺伝子第2世代まで伝達
【バイオ】発信:2009/06/15(月) 22:37:05
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実験動物中央研究所の佐々木えりか室長、慶応技術大学医学部の岡野栄之教授らは、霊長類であるコモンマーモセットで高効率に遺伝子改変動物を作り出す方法論を構築した。また、遺伝子導入した第1世代だけでなく、第2世代まで導入遺伝子が発現しており、世界で初めて、次世代まで導入遺伝子が受け継がれた霊長類の作出に成功した。霊長類の安定した実験動物系が構築されたことにより、これまでマウスやラットでは分からなかったヒト疾患の解明や脳の高次機能についての研究が進展し、日本のライフサイエンス研究が新たなステージに突入することになる。ネイチャー28日号の表紙を飾った。
遺伝子改変マウスは、遺伝子機能の解析や様々な分子機構の解明など、ライフサイエンス研究分野に多くの貢献をしてきた。しかし、マウスとヒトでは系統学的に離れているため、生理学的、解剖学的、組織学的に違いが多く、マウスで得られた研究結果を直接ヒトに当てはめられない場合も多い。例えば、サリドマイドによる奇形はマウスでは発生しない。
ところが、これまで霊長類では遺伝子改変動物の作出は成功せず、得られた遺伝子改変霊長類の体細胞における導入外来遺伝子の発現が科学的に証明されたことはなかった。さらに、これらの遺伝子改変霊長類の外来遺伝子の生殖細胞への伝達の研究報告はなく、遺伝子改変霊長類を使ったライフサイエンス研究は不可能だった。
実中研では67年から10年間、フォード財団からの支援を受けてニホンザルの繁殖研究コロニーを作り、実験用サルの人工繁殖に取り組んだが、年1産1子の繁殖では不可能という結論が得られた。そこで、実験動物として理想的なサルとして、多産で取り扱いやすく、遺伝学的管理や微生物的なコントロールもでき、多数飼育可能、生産費用も比較的安価なマーモセットの安定供給体制を80年代半ばに構築。さらに91年には、再現性を保証した科学的実験のツールとして「規格化マーモセット」を確立した。実中研では現在、1500匹ほどのマーモセットを飼育している。
研究グループは今回、この規格化したコモンマーモセットを用いて、初めて遺伝子改変マーモセット5匹を作出。さらに導入した外来遺伝子が次世代へも伝わることを霊長類では世界で初めて明らかにした。
遺伝子組み換えには、前核期胚に前核を注入する方法、ウイルスベクターで導入する方法、胚盤胞にES細胞を導入してキメラを作る方法があるが、前核注入はマウスの場合でも成功率3%であるため大量の前核期胚が必要であり、胚盤胞注入ではキメラ作出能があるES細胞が存在しない。また、ウイルスベクターによる導入法は、受精卵と膜の間の隙間が狭すぎて、ウイルス濃縮液を少ししか入れられず、遺伝子組み換えの成功率が低かった。
今回の作出では、前核期から桑実胚期の受精卵をスクロースPB1培地に懸濁することで、受精卵の水分が少し抜け、囲卵腔が拡がるため、そこに濃縮したウイルスベクターを注入して、GFPをコードする遺伝子を導入した。遺伝子を導入した受精卵は、数日間培養を行い、GFPを発現した受精卵だけを選んでマーモセットの仮親の子宮へ移植。受精卵のGFP発現率は97.7%と非常に高い。
この方法で生まれてきた5匹のマーモセット全てが遺伝子改変マーモセットであり、うり4匹は毛や皮膚など様々な体細胞で外来遺伝子が発現していた。5匹のうち性成熟に達した2匹の精子と卵子を調べたところ、外来遺伝子が生殖細胞へも組み込まれていた。さらにこの精子と野生型のマーモセットの卵子とを体外受精させた結果、GFPを発現する健康な子供が生まれた。
これにより、非常に効率的に遺伝子改変マーモセットを作出することが可能になった。作り出した遺伝子改変マーモセットの子供も遺伝子改変動物であったこと、マーモセットが高い繁殖能力を持つことなどから、ヒトに近い遺伝子改変霊長類を複数匹揃え、繰り返しの実験を行うことが可能になる。
岡野教授は「パーキンソン病やALS(筋萎縮性硬化症)といった難病の原因遺伝子を導入することで、本当の病態モデルを作ることができ、治療法開発などにつながる。また、脳の連合野はマウスではあまり発達していないため、これまで十分な研究ができなかったが、コモンマーモセットを使うことでより深い理解が可能になる。いずれにしろ、ライフサイエンス研究が次のステージに進むことになる」と話す。(科学、6月5日号1面)
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