「産学連携」では、最近のテクノロジーの動向、企業・大学の技術開発の動き等をタイムリーに紹介していきます
|
|
|
 |
「がらがら」と鳴る超伝導ラットリング現象で超伝導
【その他】発信:2009/07/07(火) 17:13:34
|
誰もがかつて遠い昔の記憶にある玩具”がらがら”(英名ではrattler)が最近、物理の世界で大きな注目を集めている。赤ちゃんが振ると大きな音を立てるこのがらがら、容器の中に小さな球が入っていて音を鳴らすが、物質の中では小さな原子が別の原子で形作られる比較的大きなカゴの中に入っている時、同じようにがらがらと動き回る(もちろん音は聞こえない)。これを”ラットリング”と呼ぶ。
東京大学物性研究所の広井善二教授、山浦淳一助教らの研究グループでは、3つのβパイロクロア酸化物における超伝導を詳細かつ系統的に調べた結果、この超伝導がまさにラットリングによって誘起されたものであることの結論を導き出すことに成功した。ラットリングが引き起こす現象にはまだまだ未知のものがあるが、従来型の超伝導を越える、まさに室温超伝導の誕生に道を拓く新しい物理的概念が確立されるのでは、と注目される。
広井教授によると、βパイロクロア型オスミウム酸化物は、数年前、研究室の博士課程学生であった米澤茂樹氏が発見した新物質。これら一連の物質が全て超伝導性を示すことも発見した。その後、この超伝導が従来にないラットリングと呼ばれる特異な原子の振動によって起こることが分かったという。βパイロクロア酸化物とは、AOs2O6という化学組成をもつオスミウムの酸化物で、Aはアルカリ金属元素Cs、Rb、K。その結晶構造は、オスミウムと酸素イオンが作るカゴの中にアルカリ金属イオンが入っていて、その大きさがカゴに比べて十分小さいため、まさにラットリング現象が起こる。最も小さいカリウムイオンにおいてラットリングが例外的に激しくなることが分かった。超伝導転移温度は、Cs、Rb、Kの順に3・3K、6・3K、9・3Kで、銅酸化物や最近発見された鉄ヒ素化合物に比べるとかなり低いが、従来型の超伝導機構では説明できない。
ラットリング原子は、負の電荷をもつ電子を失って正の電荷をもつイオンとして存在する。失った電子はカゴの上を自由に動き回り、物質は電気を流す金属となる。反対の電荷を持つ電子とイオンには互いに引き寄せ合う力が働く。最も激しいラットリングを示すKOs2O6における超伝導は、極めて強い結合の超伝導であり、ラットリングの非調和性が重要な役割を果たしていると考えられるとしている。そのメカニズムとしては、1つの電子がカゴの上を通ると近くのAイオンが強く引き寄せられる。電子に比べてイオンの動きはゆっくりしているので、電子が通り過ぎた後でもイオンはしばらく集まったままであり、正の電荷が多い領域が生じる。これを目がけて2番目の電子が引き寄せられことになり、その結果、2つの電子の間にはあたかも引力が働いているかのように見なすことができる。
広井教授の話「超伝導はクーパー対という電子のペアを作ることで生じ、ペアを作る引力が強いほど高い温度で超伝導となる。従来型の超伝導では引力を強くするには限界があり、臨界温度も低く抑えられていた。これを如何に大きくして室温超伝導を実現するか。βパイロクロア酸化物は臨界温度はあまり高くないが、ラットリングによって非常に強い引力が生じることを明らかにした。これにより臨界温度上昇に向けた1つの可能性が示され、今後の更なる物質探索によって”夢の室温超伝導”を実現できるかもしれない」
この成果は日本物理学会のが発行する英文誌 Journal of the Physical Society of Japan (JPSJ)の6月号に掲載された。(科学、6月26日号1面)
|
| |
知財情報局または情報提供各社による記事の無断転用を禁じます。
|
|
|
| Copyright 2002 Braina Co., Ltd. All Rights Reserved.
|
|